僕たちの周りも含めて、自然界にはたくさんの菌が生息しています。
その中でも良く聞くのが「乳酸菌」「酵母」「大腸菌」あたりでは無いでしょうか。
発酵食品にも使われている乳酸菌や酵母と比較すると、悪いものだという印象の強い大腸菌。
今回はこれらの違いを見ていきたいと思います。
・乳酸菌と酵母と大腸菌って何?
・何に利用されている?
乳酸菌と酵母と大腸菌の違い
まずはそれぞれの特徴を見てみましょう。
大腸菌
英語名 | Escherichia coli |
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種類 | グラム陰性の桿菌で通性嫌気性菌。 |
主な生息場所 | 特にヒトなどの場合大腸に生息する。 |
大きさ | 短軸0.4-0.7μm、長軸2.0-4.0μm。長軸が短くなり球形に近いものもいる。 |
酵母
英語名 | Saccharomyces cerevisiae |
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種類 | 真核生物、子嚢菌門(しのうきんもん)※トリュフもこの仲間です。 |
主な生息場所 | 自然環境では、果汁や樹液の溜まるところ、淡水や海水中にも広く分布する。 |
大きさ | 長さ5~8μm×幅4~6μm |
乳酸菌
英語名 | Lactobacillus(Lactobacillus casei Shirotaはヤクルト、Lactobacillus bulgaricusはヨーグルト)、Bifidobacterium(ビフィズス菌)など |
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種類 | グラム陽性、桿菌・球菌 |
主な生息場所 | 動物の腸管、植物質(味噌、漬物など)、動物質(チーズ、ヨーグルトなど) |
大きさ | 0.5μm~10μm |
こんなところで大活躍!なくてはならない大腸菌
大腸菌と聞くとなんとなく汚いようなイメージを持つと思います。
大腸菌は無害ですが、いくつかの場合では疾患の原因となることがあり、特に強い病原性を示すものは病原性大腸菌とよばれています。
ひどい症例でいくと、赤痢を起こす株については赤痢菌とよび、衛生管理上の問題から別種扱いされていますが、大腸菌の一種です。
また、夏場などニュースで取り上げられたりする食中毒ですが、これもO(オー)111やO157などの腸管出血性大腸菌という大腸菌の株によって引き起こされます。
これらの大腸菌は人間ではなく牛の腸内に生息しているとされ、保健所は「内臓と他部位の肉は調理器具を使い分けるのが好ましい」としていますが、なんらかの原因で他のものに着いてしまって増殖し、私たちの口に入ってしまうと食中毒になってしまいます。
基本的に大腸菌の増殖の最適温度は37℃あたりとされているので、夏場は増殖しやすい環境にあり、食中毒に気をつけましょうと言われる理由です。
実験の際に大腸菌を培養する温度も37℃設定にするので、そりゃ夏場はどんどん増えますね。
基本的には細菌は75℃以上の高温調理やエタノールなどの消毒で死滅しますので、キッチンなど生活環境ではそういった対策をしましょう。
研究のときも他の菌が混ざってしまうといけないのでアルコール消毒はしょっちゅうします。
そういったところでも使用されているエタノールが消毒にはおすすめです。
特に、ご自宅で使うのであればスプレータイプを購入しましょう。
料理をする前後に片手でシュシュっと消毒できるので便利です。
生活では病気のもとであまり良いものとはされませんが、研究分野だと実は大腸菌が大活躍します。
大腸菌はバクテリアのモデル生物の一つとして、各種の研究で材料とされたり、遺伝子を組み込んで化学物質の生産にも利用されます。
僕も乳酸菌の遺伝子組み換えの為にその元となる遺伝子を大腸菌で増やすということをしていました。
これは結構遺伝子組み換えの研究では当たり前で、安定して遺伝子を増殖させる為にはなくてはならない存在です。
ただの悪い奴ではなく、僕たちの科学の進歩にも貢献していると言うことも覚えておいてくださいね。
アルコール発酵には欠かせない 酵母
酵母と一言で言われるとあなたは何を思い出しますか?
人によって思い浮かぶものが違うと思います。
パンを作るためのドライイーストという人もいればビール酵母や日本酒の酵母という人もいるでしょう。
それら全て酵母というくくりで、働きは基本的に同じで、糖質を炭酸とアルコールに分解します。
作る元となる糖質と酵母の種類を変えてあげることでできるものが違ってくるのですが、例えば麦と酵母でビール、ブドウと酵母でワイン、米と酵母で日本酒など、様々な組み合わせが存在します。
最近ではワイン酵母を使ったフルーティーな香りのする日本酒なんかも出てきています。
腸内環境の大黒柱 乳酸菌
腸内環境で最重要であり僕たちの健康に大きく関わりがあるのが乳酸菌です。
基本的には”乳酸を作る菌”ですが、乳酸を腸内で作ってくれることで腸内が酸性側になり、悪玉菌が育ちにくいもしくは死滅してしまう環境にしてくれます。
その為、乳酸菌を摂取することが重要と言われていますが、昨今では実は乳酸菌が生きているか死んでいるかは重要ではないと研究結果が出てきているそうです。
口から摂取した乳酸菌は腸で定着して増殖するというイメージがまだまだ多くありますが、これは研究結果としては否定されており、99%〜ほぼ100%そのまま流れて排出されてしまうそうです。
その理由はもともといる腸内フローラ(細菌の集合体)のバランスは決まっていて菌種も固定されている為、新しく入ってきた乳酸菌は定着できないから。
ただし、乳酸菌が入っていくこと自体は意味があり、腸内にいる乳酸菌に刺激を与え、増殖や物質の生産を促す効果があります。
何がきっかけになって促す効果が出るのかについてはまだ解明されていないのですが、乳酸菌が生産した成分の”何か”ということでこれからさらに研究されていく分野になりそうです。
キムチや漬物などもプロバイオティクスの食品
生きていても死んでいても良いし、重要なのは乳酸菌が生産した物質だということで色々な摂取方法が出てきています。
簡単にまとめると、「生きたまま腸に届く!プロバイオティクス」、「オリゴ糖など腸内の善玉菌が好きな餌をあげよう!プレバイオティクス」、「乳酸菌はいらない、乳酸菌生産物質詰め合わせ!バイオジェネティック」です。
詳しいことはこちらで紹介しています。
最先端であり理論的にとても理にかなっているなと思う摂取方法は「バイオジェネティック」ですね。
増殖するしないか確率論ではなく、増殖した時に生産される成分を先に作ってしまって凝縮したものを摂取するという考え方なので、理論的に促進される可能性が上がる摂取方法だなと思っています。
ただ、なかなかそういったサプリはまだ普及しておらず、一般的にはプレバイオティクスの商品が増えてきています。
これからも乳酸菌の摂取の仕方は変化していきそうですが、人それぞれどれが効くかわからないというのが正直なところなので、注目しながら色々試して自分の腸に合うものを探してくださいね!
いかがでしたでしょうか?
少しはそれぞれの菌の特徴をわかっていただけましたでしょうか?
何となくでもわかっていれば全然得体の知れないものを見るよりは冷静に健康食品なども選べるようになると思いますので、忘れた時はたまに見返して「あ、そうそう」と思い出してもらえると良いなと思います。
菌は汚いものだけではなく僕たちの生活に欠かせないものもあるということを覚えておいてくださいね!